オランダ館は、オランダがこれまで直面してきた、そして今も向き合い続けている課題を、エネルギーオーブという印象的なデバイスを通して分かりやすく体験できるパビリオンでした。
展示全体を通して強く感じられたのは、「水」と向き合ってきた国ならではの切実さです。ただ、その切実さを重たい問題提起だけで終わらせるのではなく、最後には未来へ向けた希望や、一人ひとりがつながって進んでいくことの大切さまで感じさせてくれる構成になっていたのがとても良かったです。
内容自体はやや難しめではあるのですが、子ども向けの解説としてミッフィーが使われていたり、その展示がきちんと子どもの目線の高さに置かれていたりと、誰もが一緒に学べるような工夫もしっかりされていました。そうした点からも、テーマに含まれる “together” がきちんと意識された、とても完成度の高い展示だったと思います。
公式テーマは「Common Ground: Creating a new dawn together」
オランダ館のテーマは、「Common Ground: Creating a new dawn together(コモン グラウンド:新たな幕開けの共創)」でした。
“Common Ground” という言葉を直訳すると、「共通の土台」や「共通点」といった意味になります。オランダ館の展示内容を踏まえると、これは単なる言葉の説明ではなく、国籍や文化の違いを越えて、人と人がつながるための共通の場所や価値観を指しているのだろうと感じました。
このテーマにはさまざまな意味が込められていると思いますが、オランダという国の成り立ちを考えると、やはり環境問題への問いかけが大きな軸になっていたように思います。国土の大半が海抜0メートル以下にあるという事実を踏まえると、気候変動や海面上昇は決して抽象的な問題ではなく、日常と地続きの現実です。そうした背景を知ることで、このテーマの重みもよりはっきり伝わってきました。
外観は不思議で印象的。展示を見たあとに意味が分かる建築

オランダ館の外観でまず目を引くのは、中央に設置された巨大な球体です。
夜には青から薄紫にライトアップされていて、展示を見る前は月をモチーフにしているのかなと思っていました。けれども、実際に展示を見たあとで振り返ると、あの球体はクリーンエネルギーの象徴であり、外壁に設置された波のようなパネルとあわせて、「日の出」つまりテーマにもある“新たな幕開け”を表していたのだと分かります。
最初に見たときは、「不思議で変わった建築だな」という印象だったのですが、展示を見終えたあとには、その外観自体がしっかりテーマを表現していたことに気づかされました。見学前と見学後で建物の見え方が変わるのは、とても面白い体験だったと思います。
水と向き合ってきた国の歴史が、緊張感をもって伝わってくる
館内の展示では、全体を通してオランダが直面している課題、特に海面上昇の問題が強く語られていたように思います。
オランダの国土の多くが海抜0メートル以下にあること、そしてその歴史そのものが水との闘いだったことが、展示を通して丁寧に説明されていました。地球温暖化による海面上昇というと、つい南の島や遠い場所の問題のように考えてしまいがちですが、オランダにとっても非常に現実的で切実な問題なのだということが、この展示ではとてもリアルに伝わってきました。
単に知識として「そういう国なのだ」と理解するのではなく、「これは今も続いている問題なのだ」と緊張感をもって受け止められる展示だったのが印象的でした。
エネルギーオーブがあることで、学びが体験に変わる

オランダ館の展示で特に印象的だったのが、入場時に一人ひとり手渡される「エネルギーオーブ」です。
この光る球体を持って館内を進み、展示に近づけると内容が変化したり、端末の色が変わったりする仕組みになっていました。オーブの色が変わる演出があることで、ただ説明を読むだけではなく、自分自身が新たな知識やエネルギーを受け取っていくような感覚があり、楽しみながら学べる展示になっていたと思います。
また、基本的には一人ひとりが個別に説明を受けるような構成でありながら、場所によっては複数人が同時にオーブを近づけることで説明が始まる場面もありました。そうした演出には、人同士がつながるための共通の場所という “Common Ground” の考え方が、そのまま体験として落とし込まれているように感じられました。
ドーム型シアターが見せる、希望のある未来

展示の最後には、天井のドーム型シアターいっぱいに映像が映し出される空間が用意されていました。
ここまでの展示では、オランダの水に関する歴史や直面している課題を知る流れが続いていたため、内容としてはやや重たさもありました。けれども、この最後の映像では、水を脅威として捉えるだけではなく、それを未来の可能性やエネルギーとして活用していく姿が描かれており、全体を希望のある雰囲気で締めくくってくれていたのが良かったです。
特に印象に残ったのは、映像を見ている来場者たちの持つオーブが一斉に輝き出す演出でした。ここまで個々に学んできたことが、最後にひとつにつながっていくような感覚があり、「未来を変えていくには一人ではなく、みんなで進んでいく必要があるのだ」というメッセージが自然に伝わってきたように思います。
ミッフィーによる子ども向け展示がとても丁寧だった

会場内では、オランダを代表するキャラクターであるミッフィーも登場していました。
主に各展示のそばに配置されていて、絵本のような形式で、子どもにも分かりやすい内容が示されていました。メインの展示がどうしても大人向けで少し難しい内容になっていたことを考えると、この子ども向けの補助展示はとても大切だったと思います。
特に良かったのは、ミッフィーの展示がきちんと子どもの目線の高さに合わせて設置されていたことです。キャラクターを置くだけでなく、本当に子どもが自分で見て楽しめるように考えられていたのが伝わってきました。こうした小さな配慮の積み重ねからも、“together” というテーマを言葉だけでなく実際の展示の作り方でも表現していたのだと感じます。
オランダ館で特に印象に残ったこと
オランダ館で特に印象に残ったのは、「水との闘い」という言葉の意味が、自分の中で少し変わったことです。
水との闘いというと、つい水をどう確保するか、どう不足に対応するかという方向を思い浮かべがちですが、オランダにとっては水が脅威そのものでもあるという、まったく逆の意味を持っていました。そのことがとても印象的でしたし、同時に、水は脅威でありながらも生命線でもあるという複雑さも、この展示を通して強く感じました。
だからこそ、国民が協力してきた歴史があり、さらにその脅威である水を未来のエネルギー源として活かしていこうとする発想へつながっていくのだと思います。そのメッセージ性の強さは、展示を見終えたあとにも強く残りました。
エネルギーオーブを通して来場者が一緒に体験すること、子どももミッフィーを通して展示を楽しめること、そして最後には皆で未来へ向かう感覚が生まれること。そうした全体の流れを通して、オランダ館ではテーマである “Common Ground” をしっかり感じることができたように思います。
まとめ
オランダ館は、水とともに生きてきた国だからこそ伝えられる切実さと、その先にある未来への希望を、体験型の展示を通して分かりやすく伝えてくれるパビリオンでした。
エネルギーオーブという仕掛けのおかげで、少し難しい内容も自分の体験として受け取りやすくなっており、最後のドーム型シアターでは、それまで学んできたことが未来への希望へとつながっていく流れもきれいでした。
さらに、子ども向けにミッフィーを使った展示が丁寧に用意されていたことからも、このパビリオンが本当に “together” を大切にしていたことが伝わってきます。オランダ館は、課題を知り、考え、そして希望を持つことができる、とても良い展示だったと思います。











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