ウーマンズ パビリオンは、女性の権利や社会進出を大きなテーマに据えた、非常にメッセージ性の強いパビリオンでした。
ただ、単に「女性を応援する」という分かりやすい言葉だけで終わる展示ではありません。実際に見学してみると、女性が置かれている環境や社会課題を見つめながら、より多くの人が“ともに生き、ともに輝く未来”について考えるきっかけを与えてくれる内容になっていました。
展示を見終えたあとには、建物の見え方すら変わって感じられる。ウーマンズ パビリオンは、そんな深い余韻を残すパビリオンだったと思います。
公式テーマは「ともに生き、ともに輝く未来へ」
カルティエと日本政府が共同出展したウーマンズ パビリオンのテーマは、「ともに生き、ともに輝く未来へ」でした。
このテーマは、主に女性がより自由に、より活躍できる社会への願いを込めたものですが、ここで使われている“ともに”という言葉には、性別だけでなく、年齢や国籍を超えて、さまざまな立場の人にこのテーマを自分ごととして考えてほしいという思いも込められているそうです。
万博全体のテーマにも通じる“輝く”という言葉を、「誰かが目立つこと」ではなく、「一人ひとりがそれぞれの立場で力を発揮できること」として捉え直させてくれる。そんなパビリオンだったように感じました。
外観は華やかで印象的。見学後には意味の見え方が変わる建築

ウーマンズ パビリオンの外観でまず目を引くのは、建物の外側を覆う格子状のフレームです。建物本体の表面にはミラーが使われており、その格子の隙間から光が反射して、キラキラと輝いて見えるのがとても印象的でした。万博会場の中でも、ひときわ美しく、目を引く外観だったと思います。
一方で、内部には多くの木材が使われており、外観の華やかさとはまた違った、やわらかさや温かみを感じる空間になっていました。この外と内のギャップも、このパビリオンの魅力のひとつです。
ちなみに、建築に使われている資材の一部は、2020年のドバイ万博の日本館で使用されていたものを再利用しているとのことでした。さらに、2027年開催予定の横浜花博でも再利用されるそうで、こうした循環の考え方も万博らしさを感じさせます。
見学前は「かなり奇抜で目立つ建物」という印象を持っていましたが、展示を見終えたあとは、受ける印象が大きく変わりました。格子状のフレームは、女性を取り巻くさまざまな課題や制約を表しているようにも見えますし、外壁に多用されたミラーは、周囲を映す鏡であると同時に、女性自身の輝きを表現しているようにも思えます。2階に設けられた庭園の吹き抜けも、閉じ込められるのではなく、未来へと開かれていくイメージにつながっているように感じました。
メッセージ性の強い展示だからこそ、建築から受け取るイメージも人によって大きく異なるのではないかと思います。
展示は、ひとりの人生を追体験することから始まる
ウーマンズ パビリオンの展示は、まず「THREE PATHWAYS」と呼ばれるエリアから始まります。
ここでは、国籍や年齢、職業の異なる3人の女性の人生をたどることになります。誰のストーリーを体験するかはランダムになっており、私が案内されたのは、メキシコ出身の環境活動家、シエ・バスティダさんの人生でした。ほかの2人は、日本の小説家である吉本ばななさんと、スーダン出身の詩人であるエムティハル・マフムードさんだったそうです。
THREE PATHWAYS|静かな空間で、誰かの人生に触れる

このエリアでは、映像や展示物を見ながら、イヤホンでナレーションを聴いて進んでいきます。
私が体験したシエ・バスティダさんのストーリーでは、故郷が洪水被害を受けたことをきっかけに環境活動家となったこと、そしてこのままでは世界中で多くの人が水害の被害を受ける可能性があることが、静かに語られていました。
日本に住んでいても、水害をはじめとした自然災害は決して他人ごとではありません。淡々と語られるその言葉を、静かな空間の中で一人で受け止める時間は、万博会場の高揚感や熱気とはまったく異なるものでした。だからこそ、強く記憶に残っています。
「MA」で与えられる、立ち止まって考える時間

追体験エリアを終えると、次は「MA」と呼ばれる空間に進みます。
ここには、水が張られたテーブルが中央に置かれており、薄明るい静かな空間の中で、ただ座って過ごす時間が与えられます。直前の追体験エリアでは、自動進行で多くの情報が次々と流れ込んでくるため、この「MA」(間)の時間は、それらを自分の中で整理し、静かに受け止め直すためにとても大切なものだったように思います。
単なる“休憩”ではなく、展示の一部としてきちんと意味を持った時間になっていたのが印象的でした。
PUZZLE BOX|個人の物語から、社会全体の課題へと視野が広がる
その後は「PUZZLE BOX」のエリアへ進みます。ここでは、別の人生を体験した来場者たちと合流し、女性を取り巻く環境や課題、自然環境に関するデータ、さまざまなメッセージなどに触れることができます。
個人の人生をたどる体験から始まり、そこから社会全体の構造や現実へと視点が広がっていく流れは、とてもよくできていると感じました。
一方で、このエリアには見学時間の制限があり、すべてをじっくり見ることができなかったのは少し残念でした。「THREE PATHWAYS」で体験しなかった残り2人のストーリーも含めて、もっと時間をかけて学びたいと感じる内容だったので、万博会場とは別に、資料館のような形でより詳しく知ることのできる場所があってもよかったのではないかと思います。
ウーマンズ パビリオンで特に印象に残ったこと
ウーマンズ パビリオンは、展示内容そのもののメッセージ性が非常に強く、見学後には鮮烈な印象が残ります。けれども、それ以上に印象的だったのは、見学前と見学後とで、建物そのものから受ける印象が大きく変わったことでした。
最初は華やかで個性的な建築だと感じていたものが、展示を見終えたあとには、社会の構造や制約、そしてその先にある希望を象徴するもののように思えてくる。この体験は、他のパビリオンではなかなか味わえないものだったように思います。
女性の社会進出や権利の問題は、日本でもますます重要性を増しているテーマです。そしてそれは、決して一部の人だけが考えればよい問題ではなく、誰にとっても無関係ではない事柄だと思います。ウーマンズ パビリオンは、そうしたテーマについて立ち止まって考えるきっかけを与えてくれる、とても意義のある展示でした。
まとめ
ウーマンズ パビリオンは、女性の権利や社会進出をテーマにしながら、性別や立場を超えて、多くの人に「ともに生き、ともに輝く未来」を考えさせるパビリオンでした。
体験の入り口は個人の人生ですが、そこから社会全体の構造や課題へと自然に視点が広がっていく流れが見事で、ただ情報を伝えるだけではなく、来場者の中にしっかりと問いを残していく展示だったと思います。
そして、見学後に建物そのものの見え方まで変わるという点でも、とても印象深いパビリオンでした。万博終了後も、展示内容をより詳しく知ることができる形で何らかのレガシーが残ってほしいと感じさせる、非常に良い展示だったと思います。









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