スイス館は、ハイジという日本でも親しまれている存在を入口にしながら、スイスの自然や文化、そして最先端技術までを楽しく学べるパビリオンでした。
スイスという国に対しては、ハイジに象徴されるアルプスの大自然や伝統的な暮らしのイメージがある一方で、金融や先端技術の分野で世界的な存在感を持つ国でもあります。そうした二つの顔を、知識としては何となく知っていても、ひとつの国の魅力として結びつけて考える機会は意外と少ないように思います。
その点、スイス館の展示は、自然や文化の親しみやすさから入り、そこから少しずつ未来の技術へとつながっていく構成になっていて、そのギャップをとても上手に埋めてくれていたように感じました。
公式テーマは「From Heidi to High Tech」
スイス館のテーマは、「From Heidi to High Tech(ハイジと共に、テクノロジーの頂へ)」でした。
このテーマの通り、展示では、ハイジの世界に代表されるアルプスの自然や伝統的な暮らしを感じさせる要素から始まり、そこからスイスが持つ最先端技術へと視点が広がっていきます。親しみやすい入口から未来へとつながっていく流れがとても分かりやすく、テーマとしてもよくできていると感じました。
また、最先端技術に関する展示はさらに「Augmented Human(人間拡張)」「Life(生命)」「Planet(地球)」の3つの領域に分かれており、会期中に期間ごとで内容が変わっていたそうです。私が訪れたときは「Life」がテーマとなっており、生命や医療に関わる展示を見ることができました。
風船のような白い球体が連なる、軽やかな建築

スイス館の外観は、白い風船のような球体がいくつも連なった、とても独創的なデザインでした。ひと目見ただけで印象に残る建物で、万博会場の中でもかなり個性的な存在だったと思います。
この外観からは、見た目の軽やかさだけでなく、建物そのものの軽量化やCO2削減といった考え方も表れているとのことでした。また、建物のまわりには植物が多く配置されていて、美しい庭園のような空間になっていましたが、これも単なる演出ではなく、環境負荷の低減を意識したものだそうです。
見た目のかわいらしさや面白さだけで終わらず、建築そのものに現代的な価値観が込められている点も、スイス館らしいところだと感じました。
ちなみに、最上部の球体は「ハイジカフェ」となっており、とても人気が高く、長い列ができていました。真夏の暑さの中で並ぶ体力はなく、私は残念ながら断念しましたが、それだけ注目度の高いスポットだったのだと思います。
展示は大きく3つのエリアで構成
館内の展示は、大きく分けると3つのエリアで構成されていました。混雑緩和のためか、基本的には前のエリアには戻れないようになっていましたが、各エリアの滞在時間そのものに厳しい制限はなく、思っていたよりもしっかり見学することができました。
全体としては、最初にスイスの自然や文化に触れ、その後に少し抽象的で印象的な体験型展示が続き、最後に未来の技術へとつながっていく構成になっていました。この流れがきれいで、テーマにもよく合っていたように思います。
最初のエリアの切り絵がとにかく美しい

最初のエリアで特に印象に残ったのは、スイスの大自然や文化、歴史などをモチーフにした巨大な切り絵です。
部屋を囲むように設置された大きな切り絵は、それだけでも十分に見ごたえがあるのですが、後ろからのライトアップも加わることで、とても幻想的な空間になっていました。白く軽やかな外観の建物から中に入り、最初にこのカラフルで繊細な切り絵が目に飛び込んでくる流れは、かなり印象的だったと思います。
また、ただ眺めるだけではなく、切り絵の一部をのぞき込むことで奥の絵が見えるような演出もあり、見ていて楽しい工夫がいろいろとありました。テーマにもなっているハイジの姿を見つけることができたのも、うれしいポイントでした。
一方で、少し気になったのは、切り絵が設置されている位置がやや高めだったことです。大人にとっては問題なくても、小さな子どもには見えにくい部分もあったのではないかと思います。ハイジという、小さな子どもにも親しみやすい題材を扱っているだけに、その点は少し惜しく感じました。
シャボン玉が夢を運ぶような、美しい体験展示

2つ目のエリアでは、中央に設置された湖のような空間から、無数のシャボン玉が浮かび上がる展示を見ることができました。
このシャボン玉は、エリア内に設置されたマイクに向かって夢や願い事を語りかけることで浮かび上がる仕組みになっており、とても印象的な体験でした。自分の言葉がきっかけとなって、目の前の空間に変化が生まれるというのは、やはり特別感があります。
色や形を変えながら舞い上がっていくシャボン玉を見ていると、夢が形になるまでの過程の複雑さや揺らぎのようなものまで表現されているように感じられました。そして、最後には割れて消えていくことも含めて、儚さや、何かが解き放たれていくような印象もあり、とても美しい展示だったと思います。
最後はスイスの最先端技術へ
最後のエリアでは、スイス企業による研究や技術開発についての展示が行われていました。
私が見たときは「Life」がテーマになっていたこともあり、未来医療に関する技術展示が中心でした。自然や文化を感じさせる前半の展示から一転して、ここでは最先端の医療技術や研究開発の内容に触れることができ、スイス館のテーマである「ハイジからハイテクへ」という流れがはっきりと感じられました。
中でも印象に残ったのは、「MIRACLE」という外科手術用ロボットの展示です。人間の手では難しいような超精密な手術が可能になるという内容で、まさに未来の医療を感じさせるものでした。こうした展示を見ると、「これこそ万博らしい展示だな」と素直に思います。
スイス館で特に印象に残ったこと
スイス館は、建物の外観も展示内容も印象に残るものが多かったのですが、特に強く記憶に残っているのは、やはり最初のエリアの切り絵です。
独特の形をした白い建物の中に入り、最初に目にするのがあの色鮮やかで精緻な切り絵の空間だというのは、それだけでかなりインパクトがあります。しかも、ただ一度見て終わるのではなく、見ているうちに「ここにもこんなモチーフがある」「こんな演出もあったのか」と次々に新しい発見があり、本当に楽しかったです。
スイス館全体を通して見ると、親しみやすさ、美しさ、未来への期待がきれいにつながっていて、その最初の入り口として、この切り絵の空間はとても完成度が高かったように思います。
まとめ
スイス館は、ハイジという親しみやすいモチーフを入り口にしながら、スイスの自然や文化、そして最先端技術へと自然につなげていく、とてもバランスの良いパビリオンでした。
独創的な建築や幻想的な切り絵の展示は、それだけでも十分に印象的ですが、その先にあるシャボン玉の演出や未来医療の展示まで含めて、全体としてひとつの流れがきちんと感じられる構成になっていたのが良かったです。
アルプスの自然とハイテク国家という、一見すると離れているようにも見えるスイスの二つの顔を、無理なく結びつけて見せてくれる。スイス館は、そんな楽しさと発見のある、とても良い展示だったと思います。










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